趣味のひとつに、「番組表を見る」がある。それは果たして趣味なのか?と疑問に思うかもしれないが、
仕事や職業としてではなく個人が楽しみにしている事柄
という定義に習えば、私にとってこれは歴とした趣味である。
NHK総合からテレビ東京まで、7局横いっぱいの画面、左から右に、上から下に、黒目を移動していく。
幼少期から新聞のテレビ欄を熟読していた私からしたら、面白い番組は絶対に見落とさない自信がある。
2024年1月2日、テレビ東京の深夜、「川島明の辞書で呑む」という番組を見つけた。
なんだこの、令和のタモリ倶楽部みたいな香ばしさ感じるタイトルは。麒麟川島さんの時点で面白さは確約されている中、辞書を片手にお酒を呑む、だと?私の好きがぎゅうぎゅう詰めだ。
まずは五十音の「あ」の回という、番組を作り続けていくつもり満々の勢いそのままに、春には7週連続放送という反響ぶり。
そしてあっという間にリアルイベント開催に至る。
この番組の好きなところはあげれば枚挙にいとまがないが、厳選して2つ。
まずこの番組のテーマソングが、はっぴいえんどの「風をあつめて」のところ。素敵。言葉へのこだわり。星野源さんを通して細野晴臣さんを知った身で、アルバムばかのうたをBGMに有楽町に向かう。
もうひとつは、制作会社エレファント社。構成にしろ編集にしろVTRの作り方にしろ、魅力を感じた番組は必ず制作会社がどこかを調べる癖がある。このエレファント社は、確実な演者さんを中心に置いてあとはご自由にスタイルが多い(と私は思った。あくまで私観)。
有楽町ヒューリックホール。
観客も飲酒可という素晴らしさに心弾ませつつも、片時も見逃したくない意地からスミノフ1本で我慢。
色々なライブに行くたびに、席運の良さに我ながらあっぱれとなるんだが、今回もいいお席で。
「か」をつまみに800人と乾杯。
集合住宅住みの私からしたら、鼻から抜ける吐息と、喉で鳴るふふふでしか笑い声は許されない。はははと声帯を震わせて笑った上に、手と手を合わせて音を鳴らし続けた。それだけでとても贅沢に思える。
ただ目の前に面白いことを求め、受け取り、高揚感に胸が熱くなり、温い吐息となって出ていく。それが絶え間なく、幾度となく、循環されていく。
無意識に身体に力が入っていたのを実感する帰り道。
このまま家に着くのがもったいなくて、家の近くのバーに寄った。マスターにお酒を呑みながらのお笑いライブに行ってきたことを話したら、もしかして辞書呑み?と当てられた。
なんでもタモリ倶楽部の大ファンとのことで、同じ香りを感じる深夜番組とのことでチェックしていたらしい。
私もマスターもタモリ倶楽部の最終回はまだ観ていない。カウンター越し、この2人の中で終わらない永遠。
0時を越えたのでバーを出た。
風をあつめて、帰路についた。