海と魚を連想させる5つの物語。
それはどんな場所でも強く生きようとする5人の物語。
-カメルーンの青い魚-
みたらし団子にかぶりつくと、セラミックでできた前歯が取れたサキコ。
昔付き合っていた彼氏のリュウちゃんがケンカで相手を殺しかけた。そのケンカを止めようと間に入り、リュウちゃんに殴られ折れた前歯だ。
そんな昔のことを思い出しながら歯医者に向かうと、十数年ぶりにリュウちゃんに遭遇する。
-夜空に泳ぐチョコレートグラミー-
同級生の晴子が孵化した。
いつも俯き無口な晴子は祖母の烈子おばさんの後ろに隠れている。
だが、最近の晴子は烈子おばさんをバカにする同級生に反撃をする。
俺は夏休み中に新聞配達のバイトをしていて、晴子の家がいつもに比べて静かなことが気になっていた。
-波間に浮かぶイエロー-
ドラッグクイーンの芙美が務めるレストラン。
芙美はいつも黄色い洋服を身にまとい濃いめの化粧を施し、お客を驚かせていた。
そんなレストランに、助けて欲しいと訴える女性が現れる。
その女性はレストランオープン時に送った招待ハガキを持っており、芙美のかつての同僚だという。
-溺れるスイミー-
幼い時に父はいなくなり、母と2人で暮らしてきた唯子。
同じ会社の上司にプロポーズされ、返事に悩んでいたある日。
唯子は工事現場を眺めていると、鼻が少し曲がり強面な男性、宇崎に声をかけられる。
住処を転々とする大型ドライバーの宇崎は、唯子をダンプカーに乗せて、あてもなくドライブをするようになる。
-海になる-
流産を繰り返し、夫からひどいDVを受ける桜子は、誕生日の今日、自殺することを決意する。
顔にできたあざを化粧で隠し外に出ると、見覚えのある男性に出くわす。
彼は、桜子が流産で体が弱まっていた時に助けてくれた人だった。
人との繋がりは、愛おしさ、優しさ、醜さ、妬ましさ、と数えきれない感情が絡みながらに成り立つ。
自分が心地よく生き続けられる場所に向かって、彷徨い立ち止まりながらも息継ぎを繰り返す、感動の物語。