オーデュボンの祈り【伊坂幸太郎】

オーデュボンの祈りのあらすじ

未来の見えるカカシが、なぜ自分が殺されることを阻止できなかったのか?

コンビニ強盗に失敗し、気が付いたら見知らぬ島に連れてこられていた伊藤。

その島はなんでも、100年以上も外界から遮断しているようで、島民は島の外から出たことも無い。

嘘しか言わず、毎日同じ時間に散歩に出かける元画家、園山。
人の言葉を話し、未来が見えるカカシ、優午。
唯一人を殺すことを許されている美少年、桜。

その島の住民は、何とも不思議な役割を果たしながら暮らしていた。

未来は見えるものの、未来の話はしてくれないカカシの優午だが、伊藤にはいくつかのアドバイスをくれる。
この島には足りないものがある、と。

次の日、優午は何者かによって殺された。

優午はなぜ自分の死を阻止できなかったのか。
この島に足りないものとは何か?

個性豊かな住民との会話を元に、その謎を紐解いていく推理小説。

オーデュボンの祈りの名言

人生ってのはエスカレーターでさ。自分はとまっていても、いつのまにか進んでるんだ。乗った時から進んでいる。到着するところは決まっていてさ、勝手にそいつに向かっているんだ。だけど、みんな気がつかねえんだ。自分のいる場所だけはエスカレーターじゃないって思ってんだよ。

悪気があるわけではないのだろうが、気分の良い言い方ではない。彼は、裏のない男ではあるが、知らず人を傷つけて生きてきたタイプに違いない。そういう人間はかなりの人数存在していて、彼らのおかげで、生きるのが辛くなることが多いのも事実だ。

心音がぼくを包む。落ち着く音だった。身体の中では血液が、爆発するように送り出されているのだろうが、その鼓動が心地よい。絶え間なく続く、血液の循環だ。はるか昔、僕は誰かの腹の中で、この音を聞きながらよく眠っていたのだろう。守られている感覚がある。すっと力が抜ける。

夜を楽しむのが夜景を楽しむことだ。星と夜と、真っ暗な海、だな。だって、夜の景色と書くじゃないか、と。

静かで真っ暗な夜に、藍色の空や、そこに点在する星の小さな白色や、底無しのように見える海とその音を、膝を抱えて楽しむことも立派な娯楽だよな、と感心した。とても贅沢なものに思えた。