舟を編む【三浦しをん】

新しい辞書「大渡海」の出版に向け、長く壮大な旅が始まる。

幼い頃から辞書に魅了され、玄武書房に入社した荒木。編集者として辞書の作成に携わっており、定年まで残りわずかな月日を過ごしていた。

荒木は国語学者の松本と、新しい辞書「大渡海」の出版に向け精を出していたが、定年までに出版することは難しく、言葉の知識、辞書に対する熱意を持つ後継者を探していた。

同じ部署には、営業には向いているが辞書作りには頼りないお調子者の西岡。

実務を担当している契約社員の佐々木、しかいない。

頭を抱える荒木に西岡は、向いている男が営業部にいると教えてくれた。

周りにまじめさんと呼ばれるその男は見た目には一切気を配っていない。梲が上がらず軟弱そうな青年であった。

だが話してみると言葉に対する感性は見事で、荒木は引き抜くことにした。

そしてその男は、あだ名でもなんでもなく馬締という名であった。

決して器用とは言えない馬締は、私生活においても少し変わっていた。

下宿の1階は馬締の本で占領されてしまい、大家のタケおばさんは2階に追いやられている。

そんな下宿にタケおばさんの孫の香具矢が引っ越してくる。
たら馬締は香具矢に一目ぼれをし、どうしたらいいものか悩んでいた。

膨大な量の言葉に悩み救われ、着実に1歩ずつ歩みを進める。困難にぶつかりながらも、航海の舟は止まることなく漕ぎ続ける。

辞書作りに携わる者たちの人生の物語。