Nのために【湊かなえ】

みんなが大切な人を思い、その人が傷つかない方法を取った。

すべてはNのために。

タワーマンションの一室で、野口貴弘は頭から血を流し、野口奈央子は腹部を刺され亡くなっていた。

その場には血の付いた燈台を持った西崎真人、奥の書斎には杉下希美がいた。

後から出張レストランのスタッフ成瀬慎司が訪れ、マンションのラウンジには安藤望がいた。

野バラ荘というボロアパートに住む杉下、安藤、西崎。台風による浸水で3人は仲良くなる。

杉下と安藤は、安藤の就職祝いで訪れた石垣島で、野口貴弘、奈央子夫婦に出会う。

杉下と安藤は将棋が好きで、同じく将棋好きの貴弘と意気投合する。

また、安藤の就職先が貴弘が務める会社であった。

旅行後も野口夫婦が住むタワーマンションに呼ばれたり、杉下と奈央子は買い物にでかけたりと、4人の親交は続いていた。

だが突然の野口夫婦からのお誘いがなくなった。

奈央子が体調を崩しており外出ができず、携帯も解約したのだという。

心配になった杉下と安藤は、奈央子を励まそうとマンションを訪れる。

至って普通に見えた奈央子だが、時折情緒不安定になる。

だが、2人が驚いたのは玄関の外側にチェーンが付けられていたことだった。

実は奈央子は流産をしてしまい、突然家を飛び出してしまうことがあったので、貴弘が家に居ないときは家に閉じ込めているのだという。

そんなある日、杉下が同窓会で成瀬と再会する。

成瀬はフレンチレストランでアルバイトをしており、そのレストランは野口夫婦にとって思い出の場所であった。

出張サービスもあると知り、杉下は貴弘に相談する。
そしていつもの4人で、野口宅で会食をすることとなったのだった。

その場にいた4人の証言を元に事件の内容が明かされる。

だが、それぞれが抱えていた真実を紐解くと、事件は大きく歪み始める。

切なさに満ちた、純愛ストーリー。