わたしたちの間にあった美しいことといえば、きっと出会いくらい。
人生退屈な29歳受付嬢とお笑い芸人たちによる、恋愛スパイス前向き人生論。
大阪の一流企業の受付で、契約社員として働く柳生美雨。
顔と若さだけで座っていられる受付のイスは、30歳でタイムリミットとなり退職させられる。
退職まであと1年となった29歳の誕生日に、後輩の千冬からバンドライブの最前チケットを貰う。
靴擦れの痛さに悶えながら、ライブに頭を抜かしていた美雨は、ライブスタッフの1人と目が合う。
「ふんすい」
ライブ会場の外にある噴水を指すであろう言葉を投げかけられた美雨は、ライブ後に噴水の前でその男を待つ。
約束通り現れたその男に、靴擦れの治療をしてあげると言われ、家について行く美雨。
何か起きる覚悟を決め、言われるがままに家に上がったものの、簡単な治療が済んだら自分の家に帰るよう言われてしまう。
別れ際、その男からお笑いライブのチケットを渡される。その男は売れないお笑い芸人、矢沢亨であった。
掴みどころのない亨と、相方の弓彦、その仲間の芸人たちとの交流を通じて、仕事と家の往復だった退屈な美雨の人生は、大きく変わりだす。
それは雨上がりの世界のような輝き。
美雨と亨と弓彦は、不思議な友情と恋心を絡ませながら、季節はめぐり、思いがけない嵐の夜が訪れる。
できること、やりたいことが何もない、未来に漠然とした不安を抱え生きてきた美雨が、あるお笑い芸人たちと出会うことで、空高く飛び始める。
心温まる大阪ストーリー。