分からない不安を抱えていなきゃいけないなんて、おかしい。
光の溢れた場所に行きたい。
愛を知るのに、勇気って必要なの?
高校2年生の僕のクラスには遠い親戚の橙子がいる。
橙子は昔から支離滅裂でとにかく厄介な子だった。いつもしかめ面でくだらない嘘もよくつく。
そんな橙子はクラスに馴染めずいつもひとり。
合唱コンクールの話し合いで、自由曲のアルトとバスのソロパートを決めることに。
人目を引くリーダー的存在のヤマオがバスのソロにと手を挙げ、これ以上ない人選にクラスも沸く。
そんなヤマオが、アルトのソロに橙子を推薦する。
話し合いにすら参加する気もない橙子は、「当日来ないけど、それでもいいなら」と、いつものように反発するばかり。
指揮を担当する実行委員の青木さん、伴奏を担当する僕、ヤマオ、そして橙子。
練習を機に橙子との距離を縮めていった僕たちは、周りとも打ち解けていく橙子の様子をみて喜ぶ。
しかし、いつも橙子は絶対に言わないでと、何度も何度も口止めをしてくることがあった。
橙子の理解できない言動の理由がわかる衝撃的な事件が起き、苦しい秘密が明かされていく。
私という存在を認めてほしい。愛してほしい。
でも、愛を知らない。
若くて素直で力強くてやるせない気持ちを、歌にのせて全力で突進してくる。
これは青春、そしてそれを取り巻く家族の物語。