全部ゆるせたらいいのに【一木けい】

ゆるすと諦めるって、どう違うんだろう。

愛とはなにか、誰か答えを教えてください。

高校生の時から付き合ってきた宇太郎と結婚し、一歳の娘と暮らす千映。

仕事のストレスを酒で発散する宇太郎は、育児の手伝いもなく毎晩泥酔して帰ってくる。

1人で娘の子育てに勤しむ千映は不安でいっぱい。

宇太郎に酒の量を抑えてほしいと頼むも、俺の人生なのに指図ばかりしないでと反論される。

結婚前の楽しかった日々を思い返しては辛くなる。

千映がここまで酒に敏感になるのは、酒に溺れ家庭を崩壊させた、父の存在があったから。

聡明でどこか不思議な魅力のあった父は、千映たち家族を養うために働き、苛立ち、酒に逃げた。

ゆるして信じて優しくできたらいいのに。

家族だから、できない。家族だからこそ、苦しい。

どんな父でも愛していた母、家族のために自分の人生を手放した父。

幸せな時も苦痛な時も、そこに家族の愛はあった。

愛があるから望み、期待をする。どうしたら信じ合って生きていけるのだろう。

奥底にまで突き刺さる苦しみを描く、圧倒的長編小説。