言葉の力を信じてみたらどう?
長年片思いをしていた幼馴染、厚志の結婚式に出席していた二ノ宮こと葉。
ただでさえ憂鬱な気分で睡眠不足な上、厚志の取引先の社長のスピーチはあまりにも退屈。
こと葉の意識は途切れ、スープに顔を突っ込んでしまう。
恥ずかしさに慌てながら会場から抜け出すと、デキる風なかっこいい女性に話しかけられる。
不思議な雰囲気に圧倒されながらも式に戻ると、その女性は厚志の尊敬する言葉のプロフェッショナルと紹介され、披露宴の締めのスピーチが始まった。
電光石火、理路整然、軽妙酒脱、拍手喝采。今までに聞いたことのないスピーチに、こと葉は自然と涙が溢れていた。
彼女はスピーチライター、久遠久美。
厚志の亡くなった父親は議員で、最後の代表質問の原稿を考えたのも久美であった。
国会など何ら興味のなかったこと葉ですら、言葉の重みと熱に涙が止まらなかったことを思い出す。
こと葉は同僚の結婚式のスピーチを任されており、久美にスピーチの作り方の指南をしてもらうため、再び会いに行く。
久美は、スピーチの基本から原稿の書き方、発声方法、パフォーマンス、服の選び方までタダで指南する。
その代わりもっとやってみたいと感じたら仕事を手伝って欲しいと言われる。
言葉に魅せられたこと葉が、政権交代を叫ぶ野党のスピーチライターに大抜擢。
仕事に奮闘するひとりの女性の人生の一コマを覗けば、涙が止まらない。勇気をもらえるお仕事小説。