明け方の若者たち【カツセマサヒコ】

彼女と行った場所全てが青春で、一目惚れなんて初めてで。

内定が決まった者だけが参加する飲み会に彼女はいた。僕が一瞬で心を奪われたその隙に、彼女は早々に帰ってしまう。

「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」

帰ったはずの彼女から入った16文字の誘い文句。明大前の公園で落ち合った2人。

これをきっかけに僕の沼のような5年間が始まる。

彼女が好きだと言ったものは、自然と僕も好きになる。そこに理由など存在しない。彼女が優位で、彼女が全てなのだ。

「もう少し押したら、いいよ」

僕のどっちつかずな態度は見透かされていて、彼女からのアシストでステップを踏んでいく。

こんなはずじゃないの連続の社会人生活が始まり、僕は高円寺でひとり暮らしを始める。

彼女が決めたソファとカーテン。セミダブルベッドが置かれた部屋。

親友と呼べる同期と彼女と僕の3人で、明け方まで飲んではいつかしたい仕事を語る日々。

いつを切り取ったってそこには彼女がいて、こんな毎日が続けばいいと思っていた。

社会に出れば、誰でもない自分になれる気がしていた。
でもそんなことは、全員が考えている平凡な思いだと気がついた時には、満員電車に揺られる日々を熟すしかなくなっていた。

かけがえのない20代を、ただひたむきに生きた5年間の僕の青春記録。