繊細な出汁がきいた熱々トロットロな京風たこ焼き|世田谷【たこ坊】

たこ焼きといえば関西の文化であるが、今では全国各所にその専門店が軒を連ね、家でも手軽に作れる料理として日本人に親しまれている。小麦粉をふんだんに使い甘辛いソースやマヨネーズなど、高カロリーのオンパレードだが何故か罪悪感なく食べてしまう不思議さ。

銀だこの発祥地群馬(あまり知られていないが)で育った私は、外カリたこ焼きにしか馴染みがないのだが、出汁がきいた本格的な京風たこ焼きが世田谷で食べられると聞き、早速行ってきた。

世田谷にいながら関西を味わう

世田谷線世田谷駅から駒沢公園通り、世田谷中央病院までの数百メートルには、こじんまりとしたスーパーやこだわりが詰まった個人店が軒を連ねている。

その中に、紅葉色に日焼けした提灯が覗く屋台風のお店がある。京風たこやき「たこ坊」だ。

店主とお客さんが同じ角度でうなだれる絶妙ショット

関西出身のご主人が作りながら順番に注文を受け付ける。メモを取ることなくひたすらに焼き続ける姿から熟練の技を感じ、年季の入った店構えや鉄板を見ているだけで、期待値と空腹感が高まっていく。

お持ち帰り専門とのことだが、お店の横に2人掛けのベンチがあるので、空いていればそこで頂くことも可能なようだ。ベンチには学校帰りの小腹満たしにと、ひとり女子高生が焼き上がりを待っていた。

黙々とたこ焼きを転がす店主

通い詰めてお気に入りを見つけたくなるメニューの数々

初手として京風たこ焼き6コ入りを注文。マヨネーズの有無を尋ねられ、迷わず有りに。迷わず。

価格は時代と共に改定をしているようなので、来店時に確認してほしい。

出来上がりを待つ間にメニューを見ていたが、色々と種類があるようだ。オリジナルの京風たこ焼きに絶対的な自信があるからこその、珠玉のアレンジメニュー。ご主人の遊び心と常に飽きさせないたこ焼きへの探究心に胸躍らされる。

京風たこ焼き

京風たこ焼き本来の味が楽しめる。

チーたこ

京風たこ焼きの中にチーズを入れたもの。チーズの醸し出す濃厚な味が楽しめる。

ねぎたこ

京風たこ焼きに刻み小ネギをてんこ盛りにしたもの。さわやかな味のハーモニーが楽しめる。

スペシャル

チーたことねぎたこを合体させたもの。チーズ、ねぎ、たこ焼きの三位一体の味が楽しめる。

ペッパーキング

京風たこ焼きに塩とブラックペーパーをかけ、フレッシュなレモンが添えられた洋風味。

ペッパークィーン

京風たこ焼きにチーズ、ブラックペーパーをかけ、フレッシュなレモンが添えられた洋風味。

手書きのメニューには丁寧に説明が書かれている

出来上がりを待つ間に常連の男性が次に並んだのだが、迷わずスペシャルを注文していた。

工程を見ていると、途中で冷蔵庫から小粒なブロックチーズを取り出し、たこ焼きの中にズボッと入れていた。熱々とろとろの生地の中で溶け出すチーズを想像したら、次回は絶対スペシャルにしようと決めざるを得ないだろう。

繊細なのに力強い美味しさを口いっぱいに頬張る

持ち方が悪くソースとマヨネーズが散らかるたこ焼き

ご主人が優しく撫でるように形を整え仕上げたたこ焼きを、私は斜めに持って歩いてしまったため、写真ではソースやマヨネーズが散らかってしまった。無念。逆に言えば、それくらいに生地がトロトロしていることが分かって頂けるだろう。

とにかく1つ1つが大きくひとくちで頬張るのは難しい。できたてをいち早くという思いそのままに、口に入れようとした瞬間にソースのほんのりとした甘さが鼻腔をくすぐる。半分で噛み切ったが、熱さで歯の先が少しジンとし、ハフハフしながら舌で転がし熱さを和らげる。

箸で掴めるほどの柔らかさが分かる

熱い湯気がふわっと放たれて鰹節の磯の香りがスーッと入ってくる。とろみの強い生地からは優しい出汁の味を感じ、酸味抑えめのマヨネーズがコクとして口の中をコーティングする。うん、美味しい。

出汁のきいた無駄のない生地

熱さのことなどすっかり忘れ、すぐに残り半分を口の中に放り込む。にゅるっとした中に弾力を見つけ噛み進めると、小ぶりのタコであることに気がつく。そうだ、私はたこ焼きを食べていたのだと思い出すほどに、生地だけで満足させられていたことにハッとする。

角度を変えて今度は右アングルたこ焼き

京風たこ焼きとは、刻んだキャベツが入っているそうなのだが、細かく刻まれているので舌触りで見つけることはできない。出汁の旨味を丸ごと味わうと考えたら、タコの存在だけで十分だろう。

ひとつひとつ丁寧に丹精込めて作られているからか、時間が立っても熱さが取れず、最後まで美味しい。生地もソースも鰹節もマヨネーズも全てにこだわっており、柔らかくも噛む楽しみが止まらない。長く地元民から愛され、常連が絶えない理由がここにはあった。

たこ焼き×ハイボール「タコハイ」の完成

早く食べたくてウズウズしているときのショット

たこ焼きのお供としては角ハイボール。メニューの中のペッパーキングを見て、ブラックペッパーとレモンに合うお酒と考えたときに、ハイカラ(ハイボールと唐揚げ)が連想されつい手が伸びていた。

たこ焼きとハイボールだから、「タコハイ」だ!なんて1人でニヤけながらグビッといただく。

厚みのあるコクとキリッとした飲み口は、繊細さの中に凝縮した旨味が詰まったたこ焼きとマッチするに決まっている。口の中にかすかに残る余韻をきれいに流しつつ、味付けの邪魔は絶対にしない万能酒なのだ。

この組み合わせはみんなに教えてあげなくちゃ!なんて思ったけど、銀だこハイボールなんてお店があったことをすぐに思い出す。恥ずかしい、恥ずかしい。

近隣公園「世田谷区立くぬぎ公園」

たこ坊から世田谷駅方面に戻り徒歩9分。世田谷区役所の目の前にあるのが「区立くぬぎ公園」。ベンチや水道があり、比較的きれいな公園。区役所前ということもあり大変静か。

途中にローソンもあるので、お酒調達もバッチリ。すぐにたこ焼きを食べたい方におすすめの公園だ。

名前の通り大きなくぬぎの木が生えている

にしても青空がキレイだな

店舗情報「たこ坊」

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