上京の住み処を見つけるにあたって、必須だったのが商店街のある街。駅にルミネはなくて良いから、改札は1つでいいから、とにかく商店街のあるところ。絶え間なくお店がある光景を見て、都会にいることを実感したかったのだ。
小田急線沿線は私が求めていた小規模商店街タウンの宝庫。下北沢と経堂に挟まれた豪徳寺駅には、昔はお寺までの参道だったという豪徳寺商店街がある。その中でも有名な焼き芋専門店を紹介しよう。
※2024年6月に、こちらのお店は閉店いたしました
推し芋を見つけるまでは終われない
駅を降りて豪徳寺方面に歩くこと5分。香ばしく甘い香り漂うお店「焼き芋専門店ふじ」だ。焼き芋専門店の中でもかなり有名なお店で、あまり名の聞かない品種を数多く扱っている。季節によって品揃えと営業時間は変わるが、長年愛されているのは美味しさ故にであることを物語る。
基本はテイクアウト専門で店内はそこまで広くない。店内と店先には簡易イスが置かれており、ササッと頂くこともできる。焼き芋以外にも栗やソフトクリームも販売しているよう。この日は7週類用意されていた。品種によって焼き時間を変え、一番美味しく味わえるようこだわりを持って販売している。
どの品種にしようか悩んでいると、店主に期間限定のふくむらさきがオススメと紹介され1つ注文。大きめのものにしておきますねと言われ、保温されているショーケースから長くてぷくっとお腹が膨らんだ1本を袋に入れて渡される。高まる感情を抑え込みお店をあとにした。
焼き芋は世界を平和にする特級品
この袋の端から端までの特大焼き芋。袋越しからも伝わる熱は、長くは持っていられないほど。だが私の心を掴んで離さない。こういう書道タッチの文字って、どうして全部美味しそうに見えるのだろうか。
幸福をもたらす「ふくむらさき」
手先のジンジンを少し我慢しながら、真ん中から割る。芋の香りと共に軽く湯気も立ち上がり、熱さをもう一度確認させられた。
茨城県産のふくむらさき。名前の通り濃い紫色が目を引く。皮は厚くパリっとしており、身から剥がすのは容易い。
蜜によって中心が濃くなっているのが断面から分かるだろう。艶めいたところを豪快に頂くと、歯に吸い付くようなネッチリ感と粘り気。まず強い甘さが正面からくるが、あとには残らない美味しさ。
しっかりとした甘さが脳を麻痺させる。頬の内側に染み渡る濃密さは、三温糖のような甘味とコク。
端の方はパリパリの皮ごと頂く。サクッとした香ばしさが蜜のまとわりをうまく崩し、最後の最後まで美味しくいただける。ホックリしていて、素材の良さを全面に引き出せているのは、こだわりある焼き方故だろう。
焼き芋のおかげで秋が楽しい。焼き芋のおかげで心が穏やかになる。幸せだ。
近隣公園「桜木ふれあい緑地」
お店から徒歩15分。少し離れている公園だが、緑豊かで遊具も多くとてもきれい。小学生が元気に遊んでいる姿を見ながらゆったりとした時間を過ごせる結構オススメ公園である。
店舗情報「焼き芋専門店ふじ」
※2024年6月に、こちらのお店は閉店いたしました